イーヨーの番外インタビュー(2016年12月号)

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9月に行われた保育・家庭教育セミナーの日に、講師のお二人に、子育て中のコプタ通信読者へのメッセージも含め、お話を伺いました。高山先生は、保育者の専門性が研究テーマですが、地域の子育て支援に携わっていた経験からもお話が聞けました。また、細田先生は心理学と教育学が専門で、どんな環境で子どもの心が豊かに育つかを研究されています。今回はアフォーダンス理論について、易しく教えていただきました。

高山 静子先生(東洋大学ライフデザイン学部 生活支援学科准教授)
細田 直哉先生(聖隷クリストファー大学  社会福祉学部  こども教育福祉学科助教)

子育て支援について

イーヨー:セミナーは保育者向けでしたが、子育て支援で園や保育者がどんな役割を担えると思われますか?

高山:今、国が全国に子育て支援センターや、子育てひろばをたくさん作っていますが、そこが担う役割が大きく、さらに、親御さんたちが運営している子育てひろばが私はすごく大事だと思っています。子育ての悩みは、基本的な知識というより、「この頃どうだった?」、「うちの子はこうだったよ。」と、他の人に聞けば解決することが多いです。なので、みんなで一緒に子育てする場所が地域にあればと思います。百町森さんの遊びのスペース「プレイ・オン」もいいですよね。

イーヨー:プレイオンでも、初対面だった親子が一緒に遊んで知り合いになって、関係ができたりしています。

細田:僕は第一子を長野県の自主保育で育てました。古民家を親と保育者が共同で整備し、里山のある地域全体を保育環境にした森のようちえんです。園という場で子どもを中心に、親と親、親子と地域がつながり、困った時にお互いに助け合える関係ができ、安心して子育てできました。「つながり」をつくること、それが園や保育者の役割だと感じました。

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子育てにアフォーダンスの視点を

イーヨー:今回、細田先生のお話で、アフォーダンス理論の視点で、子どもの行動、保育環境を一歩引いて客観的に見られると感じました。子育て中のご家庭でもできるでしょうか。

細田:「アフォーダンス」って簡単にいうと、環境の中にある「行動の種」。子どもはその種を見つけると心と体を思いっきり伸ばして「行動の花」を咲かせます。どんな種ならば発達できるかを、子どもは本能的にわかっているんですね。こうして子どもは環境と一体になって自分の知的能力や運動能力を開花させます。いくらダメと言われても繰り返しやること、それは親を困らせる「いたずら」のように見えますが、実は自分を発達させる「学習行動」であり、科学者の「実験」のようなもの。「良い/悪い」や「できる/できない」という枠組みで見ると親も子も苦しいですが、そうした枠組を外して子どもを観察できれば、子どもの中で働く「自然の力」の偉大さに感動できるはずです。

高山:子育て中は、生活に精一杯で、子どもじっくり観察するゆとりがないかもしれませんが、「ひだまり通信」にある「環境をつくろう」というページは、親御さんにも役に立つと思います。子どもは高い所があるとつい登ってしまう。これがアフォーダンスの視点ですね。子どもを叱る前に、環境を変えてみる。親御さんがこの視点を持てたら、子育てが少し楽になると思います。高い所に登るのは、「登る」という能力を獲得するため。だから、登るという能力を完全に獲得するとむやみに登らなくなります。親御さんたちには「いろいろなものに触る、ウロウロと環境を探索する」ことは、学習行動だと伝えたいですね。見方が変わると子どもの行動に寛容になれます。「なんで、触っているの。」と怒っていた親御さんが「あ、こうやって学習しているんだな。」と見守れるようになります。

細田:学ぶことのイメージを変えないといけないですよね。学校教育に慣れてしまっている大人は、学ぶというのはイスに座ってずっと文字を見ていることだと思っています。しかし、子どもは全身を使って、対象にアクティブに関わって学んでいきます。それが学んでいる姿なんですね。

どんな大人に育ってほしい?

イーヨー:最後に、高山先生が参加者に問いかけていた「どんな大人に育ってほしいか。」を3つ挙げてみるというのは、子どもと関わる上で大切なことだと思いますが、ぜひ先生たちのお考えをお聞かせください。

高山:自律的に行動する、多様な人と関る、技術などをコミュニケーションとして使うという特性の人は、幸せに生き、社会に貢献できるという研究があります。

細田:私は親になる時、2つのことができれば大丈夫と自分自身に言い聞かせました。1つは、子どもが「やりたい」ことの応援。もう1つは、子どもが安心して帰れる場所になること。裏を返せば、興味のあることに夢中になれる人、他者と安心してつながれる人になってほしかったのですね。あと1つ挙げるなら、違いを面白がれる人かな。今の子どもの喜びへの共感は未来の幸せの種になります。日々、子どもが繰り返す探索や発見に共感すること、その小さな幸せが未来の幸せの確かな基礎になります。今の環境での経験は、未来にそれを再現するための力を子どもの中に育んでいるからです。

イーヨー:ありがとうございました。