龍雲寺学園 バウデア学舎後編(2016年10月号)

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 金沢にある龍雲寺学園は保育環境が充実しています。その様子を紹介しているDVD「こどもとであう」(1,500円+税)を百町森では、園や幼児教育に関わる方におすすめし、販売しています。この映像が撮影されたのが、2012年。現在はさらにそこから発展している龍雲寺学園の保育環境の様子を2回に分けてお伝えしています。

今日はどこで何して遊ぼう!

(探索活動と試行錯誤・アクティブラーニングの保障)

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(自由遊びの園庭と保育室 子どもがその時に一番興味がある遊びをしているので、以前と充実度が違う。と職員の方が話してくれました。子どもの表情や目の輝きからも感じられるそう。)

 龍雲寺学園は金沢市の寺町寺院群にあり、敷地内に園舎、お寺の本堂、園庭にHAGS 社(スウェーデン)の大型遊具が並ぶという、敷地の広さはあまり恵まれているとはいえません。しかし、園庭では大型遊具で思い切り体を使って遊び、本堂のまわりでは葉っぱや土、水を存分に楽しんでいました。室内では、構成遊び、ゲーム、絵本、製作、ごっこ遊びと様々な遊びを自分で選んでできるようになっています。朝のお話の時間、お散歩(時期によって変わる)の日課が終わると自由に遊ぶ時間になります。以前は、室内と戸外で時間を割り振っていましたが、昨年度から子どもが好きな時にどちらでも行き来できるようにしたそうです。園長先生にその理由を伺いました。


「龍雲寺学園は園庭が広いとは言えません。そこで、必然的にこういう形になったとも言えるんですが。以前は、乳児と幼児で時間差をつけたり、散歩に出たりしていました。でも、それは時間や場所を大人が管理していて、子どもの自主性を大切にしているとは言えません。今、子ども達は自分で選んで、その日にやりたいことを考えています。」
 遊びが偏ってしまう子がいるのでは、と疑問に思ったのですが、子どもが自分でうまくバランスを取るようになるのだそうです。大人でも、ずっと外にいると疲れるし、中にいると煮詰まる。子ども同じなんですね。ですが、そんな個々の子どもの様子はしっかりと職員が把握して見守っています。

自由だからこそ見守る側は難しい 

 子ども達が自由に遊んでいるからと言って、職員はただ安全を見守っているだけではありません。子ども達の遊びがどのように発展し、次の日にどうつながるか、部屋の環境設定はどうするかなど、室内、戸外どちらにいても両方の遊びや子ども達の様子を把握する必要があります。そこで少しの時間でも職員間で子どもの様子や遊びがどう展開したかを伝え合ったり、室内、戸外の職員配置もその日の様子で臨機応変に連携して行っているそうです。また、自由に遊んでいる中にも子ども同士が遊びを共有できる工夫が随所に見られました。朝の読み語りの時間にみんなに伝えたいことを話したり(この日はアゲハチョウの幼虫がさなぎになったことでした)、子どもが作ったものを部屋に飾ることで、他の子も興味を持って、やってみようときっかけになっていました。

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(昼食前の年長児だけの時間 みんなに話したい事を共有したり、詩や言葉遊びを楽しむ時間。かぼちゃの実がなったと教えてくれた子がいた。)

たくさんあった積み木はどこへ? 

 「こどもとであう」のDVDに登場する、子ども達が協力して大きな建造物などを作り上げていたレンガ型の積み木が現在の保育室にはありませんでした。「積み木は優良な遊具ですが、他の遊びが大きく展開する場合等には撤去を恐れません。子どもの思いと願いが環境を決めるのです。」と園長先生。現在は、室内にあった左写真の大きな鳥が、積み木遊びでしていた協力して作る遊びになっていたのかなと感じました。遊びの素材は無限にあり、子ども達の興味やアイディアに合うものがベスト。積み木が良い時もあるのでしょう。何かを作るときに、大人がお膳立てし過ぎては、子ども達が自分で考え、試行錯誤する余地が残りません。自分達でアイディアを思いついたり、時には失敗する事だって大事な経験。遊びの中でも、そういう過程を大事にしているそうです。今回、木村園長のお話によく登場した、小中学校の次の学習指導要領で注目されている「アクティブ・ラーニング」は、まさに教科書のない幼児教育や保育がやってきたこと。私達がこれまで大切にしてきた保育そのものだと実感しました。

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(子どもたち合作の鳥 羽根は1種類でなく、にじみ絵や貼り絵など様々。土台の大きな段ボールも子どもたちで切ったそう。)