明星保育園 後編(2016年7月号)

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前回、明星保育園が始めた異年齢保育(3歳児から5歳児が一緒に過ごす保育)の良さなどをお伝えしました。そして今回は、異年齢保育に限らず、明星保育園が子ども達のために、よりよい保育を目指して保育を変えていくこと、変えずに大切に続けられていることをさらに掘り下げてご紹介します。

茶道を通して

 異年齢保育を始められた明星保育園ですが、茶道は年長児だけでやろうと決めた活動の一つ。お点前を身につけるためでなく、茶道を通して、人を思いやること、物を大切に扱うことを伝えていきたいと15年近く続けられています。前を通ったり、先に何かをする時、一言でも言葉をかけてもらえると、大人も気持ちがちがいます。そんな 周りの人へのちょっと した思いやりを、自然 に身につけてほしいと 思っているそうです。

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(園舎とお寺 右奥がお寺です。境内には四季の花が咲き、自然を満喫できます。)

 保育室を見学すると、年長児が紙粘土で作った和菓子が乾かしてありました。すごくリアルで上手に作ってあるなぁ、と興味を持って見ていると、担任の先生が「子ども達が和菓子職人さんに教わって本物を作り、その後、遊びの中で粘土でも作り始めたんです。」と教えてくれました。茶道を始めた当時は、お菓子はおせんべいやクッキーだったけれど、一度和菓子を出してみると、子どもたちが「これはすごい。」「おいしい !! 」と感動したそうです。小さい頃から本物を、と言われているけれど、やはり、そこも和菓子屋さんの上生菓子を出そうということになりました。さらに、子ども達が自分たちでも作ってみたいと言い出して、年に一度、和菓子屋さんに教えに来てもらうようになったそうです。

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(粘土製の和菓子 年長児が和菓子作りをした後に、紙粘土で作ったもの。色もきれい。)

和菓子を上質なものに変えると、今度は周りの物もこれではいけないと、お花もこだわりはじめました。できるだけお寺の境内にあるお花を使って、園長先生が楽しんで生けているそうです。そして、「この お花は境内のどこかにあるから探してごらん。」と言うと、茶道が終わった後に子ども達が境内を探します。茶道を通して子ども達も、作法、和菓子、お花、自然といろんなものに興味を持つきっかけとなり、思っていた以上の経験になっているそうです。日本の文化に接する豊かな実体験や、人との関わりがあって、より子どもたちの遊びの世界も深まっていくのだと、この茶道のお話から実感しました。

保育を変えていくこと

インタビューでは、明星保育園と百町森が出会った頃(約20年前)までさかのぼりました。当時、百町森の研修で、おもちゃの大切さを感じ、その頃から少しずつ良質のおもちゃを揃えられてこられ、さらに、乳児の担当制保育や流れる日課の保育をするようになったそうです。保育を変えはじめた当初は、それまで当たり前に続けてきた事や行事などをなかなかやめられなかったそうですが、子ども達や保育士の負担になるなら、勇気を持って変えていかなきゃならないと思い切られたそうです。「ただ、無駄な物を整理していくときに、必要な物もそいでしまうと感じる事もあります。変えたことにこだわり過ぎてしまったり、良い塩梅を保つのが難しいですね。」と櫻井先生。保育には正解はないからこそ、常に、「これでいいのだろうか?」と自分たちの保育を見直す目を持ち、軌道修正できる柔軟さも合わせ持っている明星保育園。今後の保育がどうなっていくのか、また楽しみに見させていただきたいと思います。

子ども達が巣立つ社会にアンテナを

様々な研修に参加し、勉強熱心な保育士さんが多い明星保育園。以前は子どもたちが遊びの中で自然に身につければいいと思っていたことも、生活環境の変化で、現在は意図的にする必要があると考えるようになったそうです。もちろん、子どもの意志を尊重するのは今も昔も変わらないけれど、乳幼児期に大切なしなやかな体作りも、子どもがやりたくなるようなしかけを大人が用意していかなければならないと。コミュニケーションを取るのが苦手な子が増えているのも、同様に、地域つながりの変化が少なからず影響してるのかもしれません。保育園では小さい頃からたくさんの友だちや大人と関わり、相手を意識して生活する事ができます。

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(子どもだけでゲームを楽しむ 保育園では、子ども同士で関わりが多く、一緒に遊ぶことでコミュニケーションを身につける機会にもなる。)

「これからの時代、子ども達がどんな社会でどう育っていくのか、小学校の学習指導要領が変わる事も含めて、そこを今、保育士がしっかり押さえていかなければなりません。」と櫻井先生はお話してくださいました。