なのはな園 その2 通信掲載(2016年3月号)

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前号(16年2月号)では、なのはな園を一日通して見学した様子をお伝えしました。今回はそこで私が見た、シュタイナー教育で大切にされていることをまとめました。

手仕事をすること

手仕事と言っても、手芸だけではありません。なのはな園では、曜日ごとに活動が決まっており(詳しくは前号に)、月曜日は給食のスープを手作りしています。子どもたちが家か<ら野菜を1つ持ってきて、それをみんなで切り、昆布だしと塩だけの野菜スープを作ります。だから、その日に集まった野菜で味が変わるのだそうです。冬ならかぼちゃとか、さつまいもだとかちょっとトロッとしたスープができ、夏はサラッとしたスープができるということです。

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(午前おやつ おやつは曜日によって決まっていて、この日は、はと麦団子。自由遊びの時間に教師が手作りしている。子どもが手伝う事も。)

 また、年長児は卒園に向けて、赤ちゃん人形を自分たちで作ります。自分で刺繍した布を2枚重ねて、洋服を作り始めている子たちがいました。「今、年長児が作っているのは人形の服ですが、私達が着られるような洋服ってこうやったら作れるんだっていうのを自分たちの手で実現するっていうのに意味があると思っています。料理もそうですし、洋服だって縫って作れる、もっと言うと家だって作れる。今はお金を出せば何でも買えるけれど、手仕事を通して、生活に使う物を自分たちの手でも作ることができると気づくことに意味があるのです。」と松浦先生。

 自由遊びの時間は、大人は傍らで手仕事をしています。おやつを作っていたり、手芸用の布を切って用意したり、縫い物をしたり。子どもの誕生日には親が一日来るそうですが、その時、親も手仕事をしているそうです。お父さんはおもちゃを磨いたり、手入れをする。そうすると、何をしているのか興味を持った子が集まってくる。大人が仕事をしている姿をみせること、何かが出来上がっていく様子を見ることって大切ですよね。

7歳までは体をつくる時期

 朝のおやつを一緒に頂いたとき、食べ終わった小皿をトレイの上に順番に重ねていきました。子どもが「3つまで重ねるんだよ。」と教えてくれ、最後にみんなのお皿がトレイにのると、「3が3 つと1 が1 つだね。」と言った子がいました。しかし、数を教えようと意図的にやっていることではないそうです。

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(自分のマーク 文字を教えていないので、持ち物にはそれぞれのマークがついています。刺繍はお母さんがしてくれたと見せてくれました。)

「学校に行くまでは数や文字を教えたりはしませんが、生活の中にそういうものはたくさんあるだろうなと思っています。年長ぐらいになると、手仕事で使う材料は何個かと聞いてくるので、お願いすると年少児の分も数えて用意してくれます。」と先生はおっしゃっていました。

 シュタイナー教育では0〜7歳を「第1・7年期」として体をつくることや身体感覚を大切に考えています。また、模倣の時期でもあり、身近な大人の真似をして学んでいきます。片付けをするのも、教師が布を畳んでいる横で、子どもがその様子を見ながら一緒に畳んでいました。また、私も片付けに参加して、遊び紐(下写真)を子どもと一緒に渦巻き状に巻きました。現代の生活では、水道やドアノブも押して作用するようになり、手首を回す体験が減っています。スプーンを使うにも、字を書くにも、手首を柔軟に動かせることが必要になってきます。だから、片付けの中でのこういった経験を大切に考えています。と先生が後から教えてくれました。

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(人形劇(小人)のコーナー 手作りのお人形や様々な素材。右のカゴに入っている渦巻き状のものが遊び紐です。)

子どもの個性を大切に

以前キリスト教の普通の幼稚園にいらっしゃたという先生に、最後にシュタイナー幼稚園との違いを伺いしました。「一般的な幼稚園は様々な場面で、子ども達に完成型を求めます。例えば、クリスマス会で劇をするなら、本番に向けてよりよくできるように練習していきます。でも、ここでのクリスマス劇は役を変えて毎日行います。子どもたちにとって毎日が本番なのです。普段の遊びにも完成型は求めません。子どもたちは本当に今に生きていますよね。だから、一人一人が今何をしたいか、何を必要としているかをよく見て対応しています。そうすることで、子ども達は自分のやりたいことを自分の力で実現でき、喜びや満足感を感じることができます。これがシュタイナー教育なのだと思っています。大変ですが、楽しいくもありますね。」とにこやかに話して下さいました。